足がつって痛い!

診察をしていると、足がつって痛い、という方を多く拝見します。

そして、その際の治療法として漢方薬を服用なさっている方が多いです。

足がつるのはなぜか、どうすればよいのか、今回のテーマです。

はじめに

足がつることを”こむら返り”と通称することが多いです。

”こむら”とは何か? 調べてみると、ふくらはぎの昔の呼び方のようです。

漢字を充てる場合は腓になります。

ふくらはぎの筋肉を腓腹筋といいますが、この”腓”になります。

こむら返りは、筋肉の痙攣です。痛みを伴うので、有痛性筋痙攣とも言います。

筋肉が硬直してしまい、痛みを伴っている状態ですね。

A. 筋肉が硬直するのはなぜか?

①筋肉を冷やしてしまった

マラソンランナーが水を足にかけてしまい、足がつって歩けなくなった。こんなエピソードもあります。

これを防ぐ方法は、保温になります。冷えが強い人では筋肉を覆って眠ると良いです。

②筋肉を動かしていない

運動不足に伴うものです。肩こりと同じですね。動かさない筋肉は硬くなり、血流が悪くなり、冷えていきます。これを防ぐのは運動ですね。

③筋肉疲労

筋肉を使い、筋肉が燃えると老廃物が溜まります。有名なものは乳酸です。

この老廃物が疲労になることがあります。

このように、運動のやりすぎで筋肉がつることがあります。

これを治すのは、筋肉を使った後でマッサージしたり冷やしたり、筋肉を労わることです。足を少し上げて眠るのも良いです。

B. 内科疾患から、筋肉が硬直することはあるのか?

⇒あります。有名な病気は糖尿病、肝硬変です。その機序を考えていきます。

人が生きていくうえで糖分は重要です。頭を働かせることができる栄養素は血中糖分ですので、糖分がないと生きていくことができません。

糖分は肝臓と脂肪と筋肉に蓄えられています。

特に肝臓が重要な働きをします。

食事をして、余剰になった糖分は肝臓に蓄えられます。

食事をしていない時間帯になると、インスリンが作用して少しずつ貯蔵した糖分を溶かして血中に取り込み、栄養とします。

この機序がうまく働かないと、肝臓以外から栄養を取ろうとします。そうして筋肉を燃やしてしまいます。

運動をしていなくても、生命を維持するために筋肉を燃やしてしまうので、老廃物が溜まり足がつります。

上記の機序がうまく回らない疾患は何か。インスリンが作用できない糖尿病と、肝臓そのものがボロボロになってしまった肝硬変が代表的な疾患になります。

朝ご飯は6時、昼は12時、夕ご飯は18時に摂取する方が多いですが、朝・昼、昼・夕の間隔は6時間ですが、夕から翌朝のご飯まで12時間を経過するため、血中に糖分が流入してこない時間が長く、上記の機序が重要になります。

そのため、朝方に足がつる方が多いとされています。

肝硬変になると、栄養を蓄える肝臓が無くなります。肝硬変の人が12時間食事をしていない状態は、健康な方の3日間の絶食に相当するとされています。そのような方の足のつりを防ぐ方法は、”夜食を摂ること”です。80キロカロリー程度の栄養を入れると、無理に上記の機序を働かせる必要がなくなるため、足がつらなくなるとされています。

では、ご高齢の方はどうでしょうか?

御高齢になると、栄養失調気味になります。肝臓に蓄えがありません。そうなると、肝硬変の方と同様に、筋肉を燃やして栄養とするので、御高齢者に足がつる方が多いのであろうと思います。

※ほかにも、電解質異常(ナトリウムやカリウムの異常)でも筋痙攣は起きますが、その頻度は少ないです。

C. 治療は?

治療の基本は、適度な運動をすること、栄養をしっかりとることです。しっかり食べて歩くことですね。すべての健康の中心になるものです。

また、糖尿病、肝硬変の方はその治療をすることが重要です。

それでも痛い時に使うのは、①芍薬甘草湯、②眠る前の少しの栄養補給、になります。

芍薬甘草湯は、筋肉の痙攣を止める漢方薬で、内服して10分くらいで改善します。

筋肉の痙攣を止めるので、しゃっくりにも効きます。よく効く漢方薬の一つです。

上記でも治らないとき、筋肉の緊張を抑える薬を使うことがありますが、筋緊張が取れる=転びやすくなる ため、余りお勧めはしません。

薬よりも、まずは根本原因の排除が大事です。

足が頻回につると感じる方、一度は血液検査をして、対応を決めていきましょう。