内視鏡検査は受けたほうが良いのか?

A.上部内視鏡検査

上部内視鏡検査、いわゆる胃カメラになります。

川崎市の胃癌検診としては、40歳以上が対象となり、胃透視であれば毎年、内視鏡検査は2年に1回実施可能です。

・胃透視(バリウム検査)ってどうなのか?

勧めません。

大きな病気であれば胃透視で見つかります。最近では、大きな癌が見つかる方は少なく、早期発見が重要と言われている中、バリウム検査は時代遅れです。

バリウム検査は、放射線被曝が比較的多く、体の負担が多い割に、得るものが余りありません。

バリウム検査を受けるなら、内視鏡検査をうけましょう。

・胃カメラは何歳から実施したほうが良い?

国立がん研究センターのDataです。

40歳過ぎから緩やかに罹患頻度が増えているのがわかります。特に男性の50歳以上では伸びが大きくなります。

このことから、40歳過ぎたら内視鏡を検討しましょう。特に50歳を過ぎたら実施することが望ましいです。

・慢性胃炎って?

内視鏡をすると、必ず慢性胃炎の診断名が付きます。胃酸が強ければ、胃が赤くなります(表層性胃炎)。胃酸が弱くなったら、胃が白くなります(萎縮性胃炎)。基本的に気にしないほうが良いです。

・胃にポリープがあります

写真2 胃底腺ポリープ

消化器内視鏡学会のページから拝借をしました。

https://www.jges.net/citizen/faq/esophagus-stomach_07

胃底腺ポリープというポリープで、比較的胃がきれいな人にできやすいポリープです。

このポリープが癌化する可能性は極めて低いです。

このポリープは胃がきれいな人にできる良性ポリープですので、このポリープがあっても頻回に内視鏡検査をする必要はありません。

・どのくらいの間隔で受けるべき?

病気ができる可能性がある場合(ピロリ菌感染を疑うような胃)は1年に1回、それ以外は2年に1回くらいが望ましいです。

・どこで胃カメラをうけた方が良いの?

私は消化器内科医で、以前は年に数百件内視鏡検査をしていました。しかし、自分のクリニックでは内視鏡検査をやらずに、病院へ紹介することにしています。その理由を記載します。

①技能の問題

 内視鏡検査を主にやっている病院の医師は、年に300~500件程度の内視鏡検査を実施します。

一方で開業医は年に100件くらいが限界だと思います。

多くの症例を経験している医師の方が診断能力が高いです。

②機械の問題

 内視鏡検査の機械は500~1000万円程度のお金がかかります。

内視鏡検査の耐用年数は約7年。

7年で1000万をペイすることは困難です。

そのため、開業医の先生は、安い機械を使うか、耐用年数を超えて機械を使うことになります。

新しい機械であればあるほど、病気の発見能力は高いです。

古い機械でやっている開業医より、沢山件数をこなして、数年で機械を変えることができる病院のほうが望ましいと思っています。

また、病院の場合、1件の検査で約40枚の写真を撮影します。写真をたくさん取るとデータ容量が大きくなるため、開業医の場合は1件で4~5枚しか撮影しません。見返しても病気を確認することはできません。

③治療をする際の問題

 病院で内視鏡検査を実施した場合に、仮に癌が見つかったら、その場で検査をし、治療計画を組めます。

一方で開業医で検査をして病気が見つかると、再度病院で内視鏡検査をします。この二度手間が問題になります。苦痛もあるし、費用もかかります。

以上のことから、検査器具、検査をする医師の技能の維持の困難を考え、病院を勧めています。

当院では主に川崎幸病院、関東労災病院へ紹介していますが、ご希望の病院があれば対応します。

B.大腸内視鏡検査

大腸カメラです。大腸カメラは、前処置が必要になります。下剤を飲み、きれいになってから検査をします。

・大腸カメラは何歳から実施たら良いの?

胃と同じような傾向にあります。40歳を超えると頻度が増えていきます。

45歳くらいになったら一度は実施したほうが良いです。

・大腸ポリープがあります

大腸ポリープには、過形成ポリープと腺腫があります。

便がこすれることで腸管粘膜が膨らみます。そうして出来るのが過形成ポリープです。これは癌化することはないです。

大腸の粘膜の一部が発育して出来るのが腺腫で、これは年に1mm程度の速さで大きくなります。1cmを超えると癌化すると言われています。

このようにポリープの種類に応じて対応が変わります。

・どのくらいの頻度で検査をするべき?

腺腫があれば、年に1回が望ましいです。

腺腫がない場合、5年くらいは内視鏡検査不要です。

・どこで検査をする?

病院が望ましいです。

腺腫がある場合に、ポリープを切り取る処置をします。

その際に、腸に穴が開くことがあります。

大腸内視鏡検査は、日本では簡単に実施する検査ですが、世界的には全身麻酔で実施する手術に準じた処置です。

このことから、クリニックで実施するよりも病院が望ましいです。

松島クリニックのように、大腸内視鏡検査に特化したクリニックでは、検査をする医師が非常に上手なので、クリニックでも良いと思います。ただし、病気が見つかってしまった場合には、病院で再度内視鏡検査になってしまうので、病院が良いと個人的には思っています。

・便潜血検査は有効?

非常に有効です。国立がん研究センターの説明をご参照ください。

https://ganjoho.jp/med_pro/pre_scr/screening/screening_colon.html

便潜血反応陽性の方に対して内視鏡検査をすることで、寿命が伸びます。一方で、大腸内視鏡検査は、上記の通り負担が大きい検査ですので、検診としては向きません。

まずは便潜血検査を、それで陽性の方は内視鏡検査、という順番が望ましいです。

まとめ

胃カメラ、大腸カメラの流れについて記載しました。

ポリシーを持って、僕はクリニックで内視鏡検査をしていません。

胃カメラ、大腸カメラは、川崎幸病院を中心に御案内しています。川崎幸病院は土日も検査をしているので、非常に便利ですし、検査をする医師の技能も良いので、お勧めです。

また、当院でも便潜血検査は実施可能ですので、40歳を超えたら検査を検討していきましょう。