やせ薬について

アライの販売が開始になり、質問を受けることが増えたので、記載します。
今まで、各種のやせ薬がありました。
多くの薬が出来ては消え、定着したものはありません。
今、話題の薬を3種類記載します。
①アライ
主成分であるオルリスタットは、1997年に海外で認可を受けており、薬としてはかなり古いものです。
食事内容に含まれる脂肪の消化管吸収を30%前後抑制し,これにより減量効果を得ようとするもので、副作用として脂肪の多い便が出ること、とされています。
海外の場合、食事摂取量における脂肪の割合が多いため、より効果があると思われています。
海外のDataでは、食事制限群で約4kgの体重減少に対し、内服+食事制限で約8kgの体重減少を認めたとされています。また、食事制限を解除した後のリバウンドも、内服していた人は少なめであったと報告されています。
このような効果から、世界数十カ国で認可を受けている薬剤です。
大正製薬が公開している臨床試験結果ですが、通常のダイエットで腹囲が-1.5cm、ダイエット+内服で-2.41cmとなっています。
薬の内服のみではなく、あくまで生活習慣を整えることが基本です。
服薬のみで痩せるわけではありません。

ただし、脂分が消化吸収されずに便に流れ込むので、油まみれの便やおならが出るなどの副作用があります。

大正製薬の試験効果ですが、58%に消化器系の副作用がでて、34%で油の漏れ、便を伴うおならが23%と、結構な確率で認めます。
効果や副作用を考えると、日本での普及は難しいのではないか、というのが個人的な思いです。
同じような薬が、2013年薬事承認を受けましたが、効果不良の判断で、保険適応にならず、2018年薬事承認取り消しになっています。
つまり、保険で使うほどの効果はない薬、として認定されています。
②マジンドール
2023年時点で、唯一の抗肥満治療薬でした。
成分が麻薬に近いため、殆どの国で販売中止になっています。
痩せる効果もわずかで、副作用が大きいため、普及していません。
③GLP-1阻害薬
食欲を抑える注射として、注目を浴びています。
糖尿病の薬として、オゼンピックという薬があります。
食欲がなくなる結果、血糖値が改善します。
これを投与量を増やすことで、体重減少を目的にした薬剤です。
オゼンピックで約5kg程度の体重減少効果を認めますが、これを2倍程度に増量したのがウゴービです。
ウゴービでは10kg程度の体重減少を認める可能性があります。
投与対象ですが、
運動・食事などを頑張っているが、BMI 35以上(もしくは糖尿病・高血圧などを有するBMI27以上)の人が対象で、糖尿病の教育研修施設(簡単に言うと、大学病院)の医師のみが処方できる
という条件になりました。

まず、教育医療機関、主には大学病院に紹介する必要があります。
肥満学会の掲示している文章です。

大学病院で、厳格な運動・食事療法をしても改善しなかった場合に投与されると推測され、殆どが対象外でしょう。
薬に伴い、食欲が低下して痩せます。しかし、薬を辞めると、食欲が戻り、体重も戻ります。
ネット上では、GLP-1ダイエットというものがあります。
ウゴービ以外のGLP-1は、糖尿病を改善するメリットと、薬のデメリットを比較した際に、メリットが勝るとして認可を受けています。糖尿病ではない人が使った場合、デメリットが勝る可能性があります。
少なくとも、長期に使用した際の安全性はわかっていません。
厚労省や糖尿病学会、内科学会などは、ダイエット目的にGLP-1は使用するべきではないと判断し、ダイエットで保険適応になったウゴービは大学病院で処方することと、厳しい条件をつけました。
まとめ
日本において、有効なダイエット薬剤はまだありません。
薬に頼らずに、運動、食事で頑張りましょう。