花粉症について ②対症療法

対症療法について記載します。

治療フローチャート(日本アレルギー協会)

①抗ヒスタミン薬

アレルギー薬として一番使用されている薬です。

ヒスタミン受容体は、H1受容体と、H2受容体が存在します。H2受容体は胃に存在しており、H2ブロッカーは胃薬として使われます。市販にもなっているガスターなどがこれに属します。

一方で、H1受容体ブロッカーがアレルギー薬と言われているものです。

H1受容体は肥満細胞(アレルギー反応を起こす細胞)以外にも、頭の中枢神経にも存在します。頭のH1受容体に作用すると”眠気”として働きます。入院中や手術中に眠れない、つらいというと点滴をすることが多いアタラックスという薬や、精神的に安定させ良い眠りに持っていく薬のリフレックスという薬は、この眠気を利用して作用させています。

頭に薬が移行してしまうと眠くなります。これが、アレルギー薬の副作用ですね。

アレルギー薬には、第一世代、第二世代があります。

第一世代は、頭にも移行する薬で、強い眠気を引き起こします。そのため、最近では使用しません。薬で言うと、アタラックスとかポララミンです。

激しく痒いときや蕁麻疹などは寝た方が治るので使うこともありますが、花粉症に対して使うことは基本的にはありません。第一世代の処方、おそらくポララミンですが、処方されているなら、主治医に理由を聞き、理解できる理由ではないなら通院を辞めるべきです。子供も飲むべきではありません。

第二世代は、頭への移行を減らし、また持続時間を伸ばした薬で、現在の主流です。アレグラ、アレロック、ザイザル、タリオン、ジルテックなどです。

どれがよいというのは無いですが、成人にはザイザルが一番使用されていると思います。処方額ベースで一番はザイザル、数ベースではタリオンのようです。

僕は少し古いジルテックを好んで処方しています。理由は後発品があるから(アレグラ、アレロック、タリオン、ジルテックくらいまでは後発品があります)、あと、自分で飲んでみたときに効果と眠気のバランスが良いと感じたからです。

感じ方は人によって違うので、慣れている薬で良いと思います。

近年、新しいアレルギー薬が複数処方開始となり、売上を延ばしました。

一つ目はビラノア。処方されることが本当に多かったです。眠気のないアレルギー薬です。デメリットは空腹時内服であること。多くは眠前内服で対応しています。

二つ目はルパフィン。鼻水だけではなく、鼻づまりに効果があります。眠気はありますが、効果もかなり良いとの話です。

三つ目はデザレックス。もともとあるクラリチンを改良し、副作用を減らした薬です。販売が途中で止まってしまったので、思ったより普及しませんでした。

来年は、ビラノア、ルパフィン、ザイザルあたりが主流になるのであろうと思います。

ザイザルはシロップもあるため、子供によく使われるようになってきています。

②抗ロイコトリエン薬

抗ヒスタミン薬は鼻水やくしゃみの改善に有効です。しかし、鼻閉には利きません(ルパフィン以外)。鼻閉に対しては抗ロイコトリエン薬を使用します。薬では、オノン、キプレス、シングレア、プランルカストなどです。薬としては結構高い薬ですが、最近では後発品が出たため、後発品としてプランルカストというのを処方されている方が多いと思います。効果はゆっくりじわ~と効く印象です。

③点鼻薬

花粉がついて鼻の粘膜に炎症が起きてしまったのを抑えるのが点鼻のステロイドです。アラミスト、ナゾネックスが一番処方されていると思います。

全身への移行性は少なく、比較的長期にわたって使用が可能です。

もう一つの点鼻薬に血管収縮薬があります。コールタイジン点鼻やトーク点鼻というものです。血管収縮薬は、鼻粘膜の血管を収縮させて、症状を軽減させるものです。徐々に効かなくなります。また血管を傷つけるため、基本的には使用しないこと(連用しないこと)とされています。問題は市販の点鼻薬の多くに血管収縮薬が含まれていることです。ステロイド点鼻と比べて、点鼻直後に効いた感じがするため、市販薬に含まれています。塩酸ナファゾリン、塩酸トラマゾリンという成分名で含有されています。”パブロン点鼻クイック”などです。市販薬は成分表記をよく見て購入しましょう。この成分は1~2週間の短期間使用する場合には良く効きますし、害もありません。

④点眼薬

抗ヒスタミン薬の点眼薬が一般的です。ザジテン点眼、インタール点眼、パタノール点眼などが多いです。点眼液の中には防腐剤が含まれています。この防腐剤はソフトコンタクトレンズを悪化させるとされ、防腐剤が入っている点眼液はコンタクトレンズを外してから点眼する必要があります。ちなみに、この防腐剤が皮膚に付着すると肌荒れの原因になります。

コンタクトレンズに影響を与えない防腐剤に変更になっているアレジオン点眼液です。効果はやや落ちますが、コンタクトレンズの上からでも点眼できるのがメリットです。

コンタクトレンズをしていないならパタノール点眼を(効果が良く、ヒリヒリしないため)、コンタクトレンズをしているならアレジオン点眼を処方するのが最近の流行だと思います。

ステロイドの点眼や血管収縮薬の点眼を使用することがありますが、非常にひどい症状の時のみとするべきです。

⑤そのほか

一昔前までは内服のステロイドも良く使われました。最近では副作用の関係から処方はほぼされません。薬ではセレスタミンというステロイド+第1世代抗ヒスタミン薬の合剤が一般的です。

ステロイドは連用すると副作用が生じます。そのため、花粉症が酷く、抗ヒスタミン薬などが効いて症状が安定するまでの数日間のみセレスタミンを使用するのが良い使い方です。第1世代の抗ヒスタミン薬が含有されているので、非常に眠くなります。

治療のイメージ(日本アレルギー協会)


⇒抗ヒスタミン薬+点鼻薬+点眼薬を中心に処方していきます。

僕が処方をするときは、以下のようにしています。

・ザイザル5㎎ 1錠眠前、もしくはジルテック10㎎ 1錠眠前

 眠くなるのを避けたい場合には、ビラノア1錠 眠前

・パタノール点眼液5cc 1日3回、1回1~2滴、両眼に

 コンタクトレンズ装着している場合にはアレジオン点眼

・ナゾネックス点鼻もしくはアラミスト点鼻 1日1回 1回2噴霧 両鼻に

 花粉飛散の時期の少し前から治療を開始すること(1月頃から)、花粉暴露から身を守る対処をすること(マスク、服についた花粉を落とす、洗濯を外に干さないなど)をすれば、大体の患者さんは症状が落ち着くと思います。

 日本アレルギー協会のサイトに写真付きで薬剤一覧の記載があります。少し前のものなので、新規薬剤は載っていませんが、参考になると思います。