訪問診療の実際<個人宅の場合>
訪問診療とはどういうものかを記載してきました。
実際にどのように動いているのかが今回のテーマです。
①訪問診療の導入
・訪問診療の依頼は、多くはケアマネージャーさんを介して入ってきます。
ゆっくりと歩くことが難しくなり、介護タクシーなどで通院していたけど、大変になった。医療機関で待っているのが大変。という流れで、ケアマネージャーに相談が入ります。
こうして始まった場合には、そこまで大変ではありません。介護調整が済んでいるためです。主な病気は、認知症や高血圧、脳梗塞後遺症などです。
・急に体調が悪くなり入院。退院に際して在宅治療を入れる必要があるため、病院から依頼が入ります。こうして依頼が入ることがあります。退院後からの開始なので、入院先との連携や、在宅調整を急いで行う必要があります。退院前のカンファレンスに呼んでいただき、何が問題なのか、家に帰るためにはどのような準備が必要なのか、それを話し合います。ちょっと大変ですね。病気は様々ですが、最も大変なのは癌の方です。詳細は後程記載します。
・弱ってきたので、どうしようと思って、ご家族から連絡を頂くことがあります。病名も状態も様々です。
※川崎幸クリニックで勤務をしていたときは、外来主治医からの依頼が度々ありました。在宅部門があるクリニックを除いて、外来主治医が「そろそろ在宅に切り替えようか」と話をしてくれることは殆どありません。なぜなら、外来のみをしている医師にとって、訪問診療は別世界であり、未知の領域。分からないから提案しません。
②訪問診療へ
訪問診療は、同意書を頂いた上で実施すること。国により指示されています。外来診療の場合、外来にきました=治療の意志がある、となります。しかし、訪問診療の場合は、医師が来ることになるため、治療の意志を確認して書面に残すことが義務とされています。
そのため、最初の訪問診療の際に、いろいろと書類の案内があります。
他にも問診票を頂くことが多いです。この際に、最終末をどうしたいのか、確認するクリニックもあります。
最初の訪問診療は、診療報酬上では初診+往診の扱いになり、そこで説明、同意を得て、2回目の診察から訪問診療となります。訪問診療は月2回が原則なので、最初の月は3回の診療を基本にしているクリニックが多いです。月末に診療開始の場合でも3回診察に行きます。これはクリニックの収益のためのもので、僕は変だと思っており、当院ではやっていません。
③定期的な訪問診療
来月は、いつと、いつに来ますとお伝えをします。その上で訪問します。
訪問診療では、実際の生活を見ることができます。薬を飲むことができているのか、間食しているのか、転倒の危険はないか、チェックして、場合により介護調整をケアマネと行います。
この日常生活を見ることができる点で、外来より患者さんとの距離が近く、家族の輪の中に入らせていただくイメージです。
お話をして、血圧などを測定し、相談のうえで処方箋を発行していきます。必要ならば、血液検査などを実施していきます。
※処方はどうするのか?
処方箋は、A お渡し(ご家族様に近所の薬局に出してもらう)、B 訪問薬剤を利用する(薬局に宅配してもらう)をご選択いただき、対応します。
訪問薬剤は介護保険を利用したサービスで、1回の配送500円くらいです。薬剤師さんが薬を持ってきてくれます。その際に薬の説明をしてくれたり、薬のセットや残数確認などもしてくれます。訪問診療をするような患者さんの場合、多くは一包化(薬を一つの袋に入れてもらう)をしていますので、薬局に処方箋を渡す、取りに行くと、2回は薬局に行く必要があり、訪問薬剤への変更をお勧めしています。
※当院の訪問診療はどうなっているのか?
当院でも訪問診療はやっています。1人の医師が負担なく対応できる患者さんの数は15名程度と言われていますので、Max15名までにしようと思っています。現在訪問診療は約10名。近隣の方であれば、数名お受けできるといった状態です。
僕が拝見している患者さんは、60歳ころ~最高齢は105歳まで。脳卒中後遺症や認知症、高齢による衰弱など、様々な病気を拝見していますが、数年来のお付き合いの方が多いです。そのため、患者さんやご家族とは、思いの共有化ができていると思っています。