高齢者の薬の飲みすぎについて

厚労省の 高齢者医薬品適正使用検討会が6月に指針を発表しました。それをもとに雑誌などに記載されています。

https://www.news-postseven.com/archives/20190707_1405538.html

NEWSポストセブンに、薬品名とともに、薬の飲みすぎで体調不良になった方の体験談含めて記載があります。厚労省の資料をもとに、この内容を今回は診ていこうと思います。

何種類くらい飲んでいる?

65~74 歳の3割及び 75 歳以上の4割でそれぞれ5種類以上の薬剤が処方されており、そのうち、痛み止めや睡眠薬、抗不安薬、利尿剤といった高齢者に害になりうる薬剤の処方が多かったと厚労省は報告をしています。

「特に慎重な投与を要する薬 物」(Potentially Inappropriate Medications;PIMs)

厚労省や日本老年医学会などは、特に慎重な投与を要する薬物PIMsというのを定義しています。この薬についてみていきます。

・認知症薬:薬による嘔気や食欲低下があり、注意が必要とされています。しかし、認知症薬は高齢者に対して処方する薬剤です。

・骨粗鬆症薬:骨密度を上げる薬は胸やけなどの副作用を伴うので、投与注意が必要です。しかし、高齢者ほど骨密度は低下するので処方をする薬剤です。

・睡眠薬:転倒のリスクがあります。厚労省の指針では非薬物療法に切り替えるようにと記載されています。高齢になると睡眠が浅くなります。それにより不眠の方も増えます。不眠でフラフラしても転倒に繋がります。

・抗うつ薬:薬の副作用により食欲の低下や頭痛などが生じる可能性があります。しかし、認知症の方の3割ほどはうつ病を合併すると言われており、高齢者に必要な薬です。

・胃薬:認知症の進行や骨粗鬆症の進行との関係がある可能性が言われています。

ほかにも高齢者に対して一般的に投与する薬が羅列してあります。つまり、高齢者に対して使うことが多い薬がPIMsとして記載をされています。処方実数が多いので、副作用としての報告件数も多いだろうと思います。

どうするべきか?

薬同士がケンカしあうことがあります。

例えば、頻脈があり苦しいという患者さんの薬を調べたら、喘息の薬があったという方が先日いらっしゃいました。気管支を広げる薬の副作用は頻脈です。その頻脈を抑える薬が数種類処方をされていました。多くの薬を飲むために体調不良になっていました。まずは気管支を広げる薬が必要なのかを判断し、減量しました。その結果、頻脈も呼吸困難も無くなり、脈を抑える薬も中止できました。

薬には効果もあれば副作用もあります。重要なのは、必要最低限の薬剤を使用することです。そのためには何が必要か。それは、受診するクリニックを1か所にまとめることです。

血圧はA内科、腰が痛いからB整形外科、花粉症はC耳鼻科、心療内科はD心療内科とクリニックが増えてくると、主治医は全ての把握は困難になります。これをまとめると全体をみて薬の必要性を判断することができます。

薬をまとめるなら内科が一番良いです。内科の先生に薬をまとめて調整してほしいと聞いてみてください(当院はもちろんOKです)。難しなら別の内科にするべきです。決めるのは少し大変ですが、一度決まればずっと楽になります。