眠れません!

<現在当院では、不安、不眠の新規の患者様の診療を中止しています。>

不眠で医療機関を受診なさる方は沢山います。

そこで、不眠について、今回は記載します。

まずは、以下に厚労省が出している不眠情報を掲示します。非常にわかりやすいです。

不眠症

①不眠の種類

・入眠障害:寝付けない

・中途覚醒:途中で目がさめてしまう。

・早朝覚醒:朝早く目が覚める

・熟眠障害:寝ているのに、寝た感じがしない

4種類に分けます。

なお、一晩に3回ほど起きるのは正常な反応です。人間の睡眠サイクルは1サイクル 1時間半ほど。1サイクルが終わるときに眠りが浅くなります。6時間眠る人なら、4サイクルになります。つまり3回ほど起きてしまいます。睡眠は20歳ころが最も深いとされており、年齢とともに浅くなります。浅くなるほどに、睡眠サイクルの切り替えのときに目がさめてトイレに行きます。また、1回目が覚めたら、30分以内に再度眠り、次の睡眠サイクルに入っていくのが通常であるとされています。

つまり、数回起きてしまうが、起きたあとで30分以内に眠ることができる、というのは正常な反応です。

また、6時間ほど眠り、朝早く起きるのも正常な反応です。例えば9時ころに就寝し、朝3時に起きてしまう場合、これを早朝覚醒とは言いません。

起きてしまったら二度と眠ることができない場合を中途覚醒、2〜3時間しか眠っていないのに目が覚めてしまい、それから眠れないのを早朝覚醒と言います。

②原因と対応

<入眠障害>

入眠障害は現代病です。3〜4人に1人くらいの高い確率で認めます。入眠障害を改善する方法は、睡眠導入剤や生活習慣の改善です。

夜になってもスマホなどで情報を得てしまうと目が覚めてしまいます。また、「10時になったから眠らないといけない」と思うほどに緊張して眠りにつけなくなります。こうした睡眠への緊張感がさらなる不眠へとつながっていきます。リラックスして夜を迎えることも重要です。

また、夜勤勤務者に不眠症の人が多いという報告があります。昼夜逆転している生活も不眠へ繋がります。そのため、できる限り日中に活動をすることも重要です。

あとは睡眠導入剤の助けを借りても良いと思います。眠ることへ恐怖を感じれば感じるほど眠れなくなりますので、まずは導入剤を飲み、毎日眠ることができるようにする、そうして睡眠への恐怖がなくなってきたら、徐々に導入剤の服用をやめていきましょう。

具体的に使用される薬剤としては、マイスリー(ゾルピデム)、ハルシオン(トリアゾラム)、ルネスタなどがよく処方されています。内服してから30分以内に効き始め、3時間ほどで効果が切れる薬剤を導入剤と言います。ゾルピデムが最も処方されていると思います。ルネスタは安全性が高く非常に効きますが、目が覚めるときに口の中が苦いという副作用があります。

また、睡眠のリズムを整える薬として、ベルソムラ、ロゼレムという薬剤も良く処方されます。効果が弱いですが、副作用も弱いです。そのため、寝付くことができず、薬を飲むのも不安である場合、よく処方されています。

睡眠薬を過量服用しても死に至る可能性は少ないです。しかし、決められた用法、用量で内服することが重要です。必ず以下のことを守りましょう。

・眠ることができないときに多く服用しない

昼間に眠りたくても服用しない

お酒を飲まない

飲酒は眠りを妨げる要因になります。なんとなく寝付きやすくする印象がありますが、眠りが浅くなるため、推奨されません。また飲酒と薬の相互作用で、効果が増してしまうことも減ってしまうこともあります。そのため、飲酒と睡眠薬の併用は危険です。

<中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害>

精神的な不安定さが背景にあるとされています。そのため、治療の中心は向精神薬(抗うつ薬)です。中途覚醒を睡眠薬のみで対応しようとすると危険です。

精神的には比較的安定している場合はデジレル(トラゾドン)をごく少量処方します。うつ病を改善するために処方する場合には1日100〜200mg使用しますが、睡眠の質を高める目的の場合は25mg程度で十分効果を認めます。

また、強固な不眠の場合、リフレックス(ミルタザピン)などを処方します。非常に良く効きますが、飲みはじめの3日間ほど、昼夜を問わず強い睡魔に襲われてしまうのが欠点です。

うつ症状が強い場合には、レクサプロ、パキシルといった抗うつ薬を処方します。

③最後に

不眠症の多くの方は内科を受診します。しかし、内科医の中には抗うつ薬の知識を全く有していない人も多いです。中途覚醒が目立つ場合など、抗うつ薬を処方したほうが良い場合は、抗うつ薬の知識の深い内科医や精神科医を受診するようにしましょう

また、時折、今後は精神薬を処方しない、と内科医に突然言われることがあります。精神薬を処方していると診療報酬が減算されることがあるからです。

睡眠薬、抗うつ薬の危険性は勿論ありますが、眠ることができずに日中の活動性が落ちていくほうが良くないです。悩んだら受診しましょう。