逆流性食道炎(GERD)について

胸やけで受診なさる方も多数いらっしゃいます。消化器のガイドラインを元に治療などのご説明をします。逆流性食道炎は医療上はGERDと表記することが多く、正式には胃食道逆流症になります。

有病率は?

内視鏡で確認できる有病率(食道がただれている人)は約10%。胸やけ症状を認めている人は約20%と推測されます。さらに、日本人の有病率は、ここ10年で倍になったとの報告もあり、増加傾向にあります。

症状は?

胸が焼ける” ”酸っぱいものが上がってくる”というのが多いですが、これ以外に、胸痛や咳として感じる方もいます。

何が悪さをするのか?

肥満⇒少し可能性あり。

激しい運動⇒おそらく関係ない。

食道裂孔ヘルニア(下記詳記)⇒大いにあり

ピロリ菌感染⇒未感染者で有病率が高い(感染すると有病率が低くなる)

タバコ⇒症状を悪化させる

アルコール⇒症状を悪化させる

チョコレート、炭酸飲料⇒関係はないが、症状が強くなるなら控える必要あり

横になる⇒関係あり。食後は座るようにしましょう。

日常生活の中で悪さをすると分かっているものは、タバコ、酒、食後の臥床のみです。

治療は?

胃薬を使用することで、9割方は改善します。PPIと呼ばれる薬をメインに使用します。

軽症の方には、オンデマンド療法(症状があるときだけ薬を内服する)が推奨されます。中等度以上の方には、長期内服が推奨されます。

胃薬の副作用は?

明確な因果関係を持つ副作用は少ないが、症状を抑えることができる最低限の量の胃薬の投与が望ましい

癌化することはある?

逆流性食道炎からバレット食道癌になることがあります。ただれた食道粘膜が再生する過程で変化(稀に癌化する)というものです。バレット食道という粘膜の変化の頻度は1%以下、さらにそれが癌化するのは10%程度とする報告例が多いです。日本人における調査が少ないため、はっきりしたことは言えませんが、かなり稀である、と思われます。

※食道裂孔ヘルニアについて

胃酸の逆流を防ぐため、横隔膜が食道・胃の接合部を締めています。腹圧がかかると、横隔膜の締める力よりも腹圧が強く、胃が食道の方にズボッと持ち上がります。これを食道裂孔ヘルニアといいます。食道裂孔は横隔膜の穴を、ヘルニアは脱腸を意味します。食道・胃の接合部の締め付けが弱まるため、胃酸の逆流は増えます。