おなら

患者さんから、「おならが出て困ります」という相談をよくうけます。

おならは出てはいけないものなのか、今回のテーマです。

屁負比丘尼

昔はおならをすることは恥ずかしいこととされていました。

そのため、身分が高い女性の側には、屁負比丘尼という尼さんがそばにいました。身分の高いお嬢様がおならをしたときに、「私がおならをしました!」と身代わりになるための仕事。

結婚をしない中年女性が役を担ったため、尼さんが多かったそうです。

そのくらい、おならは恥ずかしいものとされていました。

おならの疫学

おならの回数;1日10回くらいが平均とされています。5〜20回くらいが多いそうです。

男女比;無いとのこと。恥ずかしいので女性の方が我慢しているのかもしれません。

おならの量;1日に500〜1500mlとされています。

調べてみて思いましたが、おならの量って、結構多いですね。

おならは何?

1/4程度が飲み込んだ空気、3/4が腸管で生成されたガス、といわれています。

 腸管内のガスは、胃液が中和するときに発生したり、食事が酸に溶けるときに発生したり、腸内細菌により生成したガスであったり。詳しい機序はまだまだ不明です。主には腸管内の微生物が産生するガスといわれます。

おならの臭い

おならに含まれている硫化水素やアンモニアなどの臭いですが、排ガスの1%程度しか占めていないといわれています。

おならの臭いとおならの量に関係はないそうです。

つまり、まだわかっていないことが多いです。

食物繊維

食物繊維を減らすと、おならの量は減る事がわかっています。

日本栄養・食糧学会誌2016年に投稿されている論文、「さつまいもの摂取が女子大学生の排便状況ならびに腸内常在菌構成に及ぼす影響」が面白いです。

紅天使を300g摂取すると、便は柔らかく、便の量も増える。一方でおならの回数も増えるという報告です。

そして便の腸内細菌が芋由来の酢酸産生菌が増えていた、というもの。

食物繊維は、便通改善をするが、おならは増えます。

ほかにも、人工甘味料も、便通を改善するが、おならが増えるとされています。

ラクツロースは便秘薬としても使われています。

おならを減らす薬

結論からいうと、ありません。

便通が良くなれば、排便時におならも出ていくと考えられるので、便通改善薬をつかうのは良いかもしれません。

お腹を温める大建中湯、下剤(センナ)など。

あとは、便秘になっても良ければ、食物繊維を減らすのもおならを減らすことができます。

結論

昔は恥ずかしいものとされてきました。

しかし、生理現象として、みんなに生じるものです。

その機序はまだわかっていない要素も多く、おならを減らすことはできません。

食物繊維を減らすとおならは減る可能性がありますが、便通が悪くなります。

起きても良い生理現象であり、治そうとする必要はないです。