便秘症について
慢性便秘症に対するガイドラインが出来上がり、治療方法が記載されています。便秘は、国民病と呼べるほどに有病率の高い病気です。
便秘症とは
便秘症の定義をガイドラインでは、 「本来体外に排出す べき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」としました。漠然とした定義ですね。
診断基準によると、
排便の4分の1を超える頻度で
・強くいきむ必要がある
・便がウサギのうんちのような状態や、硬い便であること
・残便感がある
・直腸肛門に閉塞感や排便困難感を認める
・摘便などの処置が必要である
排便回数としては、週に3回未満であること
上記を2項目以上認めたときに、便秘の診断に至ります。
簡単に言えば、硬くて出しにくくて、すっきりした感じがしないとき、ですね。
また回数の目安として週3回未満というのが提示されたことに驚きを感じました。以前までの便秘の定義上は、排便回数に関係なく、おなかが張る、食欲が低下するなどの自覚症状を伴うものを便秘症としていました。男性は毎日排便がある人が多いですが、女性の場合は2~3日に1回ということが多いため、かなりの頻度で便秘症の診断に至るのではないでしょうか。
治療
①非薬物治療
運動、食物繊維を取る、よく睡眠をとる、ストレスを感じないなど。運動は1日30分以上の歩行や腹式呼吸を、食物繊維は1日20~25g程度摂取することが推奨されています。
②薬物治療
薬の基本になるものは、便を緩くする薬と、便を出すように刺激する薬です。
便を緩くする薬(緩下剤):酸化マグネシウム、マグミット
刺激する薬(下剤):センノシド、アローゼン、ラキソベロン、コーラック
上記薬剤が治療の中心でした。
酸化マグネシウムの欠点は、高マグネシウム血症です。理論上は、内服した酸化Mgは吸収されることなく、便として出ていくとされています。しかし、腎機能が悪い人、子供などで、ごく少量のマグネシウムが吸収され、その結果、高マグネシウム血症を起こす可能性があります。症状としては、嘔気や意識障害です。以前に救命救急センターで勤務をしていた先輩医師は、意識障害として搬送されてくる患者さんの中に、結構な数の高マグネシウム血症の人がいると言っていました。健診や定期採血でマグネシウムは測定しません。そのため、意識障害などをきたす危険性を認識しておく必要があります。
刺激性下剤の場合、徐々に効きにくくなるのが欠点です。腸管に無理やり刺激を加えて排便をさせるため、その刺激がないと出なくなり、習慣性が出てきます。また自然のメカニズムを用いた排便ではないので、負担が大きいです。刺激性下剤は、”センナ”が主成分です。この薬は痩せ薬の中にも含まれていることがありますので、注意が必要です。またセンナなどの成分が沈着し、腸管が黒ずんでいきます。大腸メラノーシスといいますが、害はないですが、汚い腸管粘膜になります。
上記の薬での加療が日本では中心でした。その後、作用機序の違う、第3の便秘薬がここ数年で販売開始になりました。
第3の便秘薬
・アミティーザ
販売開始当時、便通を整えてくれる薬であること、内服量は一律に1日2錠とされていました。処方してみると、確かに排便は出来ますが、下痢になる方が非常に多いと感じました。特に高齢者では高頻度で下痢になるため、1日1錠に減量して処方することが多いです。
・グーフィス
食事をすると胆汁がでてきます。その胆汁は小腸で再吸収されますが、それをブロックするのがグーフィスです。回収されていない胆汁が流れ込むため、便が緩くなり、また腸管運動を生理的に高めるという効果があります。ネックは食前内服であること。内服すると、かなりの量の便が出ます。すっきりすることが多いですね。僕も試しに内服してみましたが、良く効きます。
・モビコール
大腸内視鏡の前処置として使う下剤を、日常的に使用できる量に調整した薬です。効果がマイルドであり、12歳以上であれば使用可能。高マグネシウム血症の副作用もありません。
まとめ
便秘症を有している人は沢山います。そして多くの方が市販薬を使用しています。市販薬は、基本的にセンナを主成分とした、腸管に鞭を打って排便を促す薬になり、腸管の負担が非常に強いです。
最近では、副作用の弱いモビコールや、グーフィスといった新規の便秘薬が販売開始になりました。子供や高齢者にはモビコールを、成人にはグーフィスを使うなど、使い分けができるようになりました。腸管に負荷をかける薬を使用せずに、優しく長期間使用できる薬剤に切り替えていきましょう。