胸が痛い
当院にいらっしゃる理由の一つとして胸痛があります。
胸痛というと、どのような病気を思い浮かぶでしょうか?ほとんどの方が心筋梗塞が怖いと来院なさいます。
胸痛の中で怖いもの、それは心筋梗塞と動脈解離や食道がんです。では、頻度はどうでしょうか。
一番多いものが胸痛症候群、次に心因性の胸痛と言われ、(救急搬送されるような激しい症状を除けば)怖い胸痛は全体の5%程度ではないかと思います。
胸痛症候群
特徴
・指で指し示すことができるような限局的な痛み。
・チクチクする、ピリピリすると表現される痛みですが、突き刺すような感じという方もいます。
・痛みは数十秒~3分程度の短い時間。
・若い方に多いです。特に6歳~15歳に多いとされます。子供の胸痛では大半がこの痛みです。
・体を動かすときや呼吸をするときに痛みが生じたり、逆に運動で痛みが改善することもあります。
・突然痛みが出ますが、安静時の時の症状が多いです。睡眠中には訴えません。
・レントゲンや心電図の検査をしても、異常所見を認めません。
原因
胸壁の筋肉の成長に伴うものと考えられています。
治療
治療はありません。
※Precordial Catch syndromeと呼ばれることもあります。
心因性胸痛
疲労から肩が凝り、大胸筋の筋肉に痛みを感じて、胸痛として自覚をします。「胸が痛い」「きっと悪い病気なのではないか」と思うほどに、精神的疲労が増し、胸痛が強くなります。胸壁の痛みですので、検査しても正常所見のみです。
未成年は胸痛症候群、成年は心因性胸痛が頻度としては多いです。つまり、胸壁の筋肉に伴う痛みが圧倒的に多いです。
逆流性食道炎
胸壁の痛みの次として、食道からの痛み、逆流性食道炎を考えます。
胃酸の逆流に伴い、痛みとして自覚なさる方がいます。実は”胸が焼ける”という形で胃酸逆流を感じる方よりも、”胸痛””咳”といった食道以外の症状として訴える方の方が多いとされます。
空腹時の方が症状が強くなります。胃酸の最大の中和剤は食事だからです。食事が胃の中にない時間帯に胃酸逆流が強くなります。そのため、夜中や明け方に一番症状が強いです。
解離性大動脈瘤
動脈硬化により血管が硬くもろくなります。その動脈の壁に傷が付き、裂けていく病気です。
激痛を感じます。また徐々に避けていくため、痛みの部位が移動します。移動する激痛の際には解離を疑います。
狭心症、心筋梗塞
狭心症には、労作性狭心症と安静時狭心症とあります。圧倒的に多いのは労作性狭心症です。
普通にしていれば痛みはありません。動きだすと、それに応じて心臓の拍動数が増します。沢山拍動するために、心臓が多くの酸素を必要とします。心臓に酸素を提供する血管に狭窄があると、酸欠になります。そのため、動くときに胸痛を感じます。運動すると胸が痛く、休むと痛みが取れる状態を、”狭心症”と呼びます。
血管が完全に閉塞し、長期間酸欠に至ると、心筋梗塞になります。
安静時の狭心症は、心臓に酸素を送る冠動脈が痙攣して狭くなる病態です。朝方に多いのが特徴とされます。
気胸
肺に穴が開いてしまった状態で、痛みと呼吸困難を伴います。背の高い若い男性に多いです。
まとめ
胸痛は、胸壁の筋肉に伴う痛みであることが多いです。
しかし、なかには狭心症、気胸といった危険な病気も含まれるので、まずはレントゲンや心電図検査をしましょう。異常所見がない場合に、胸壁の筋肉痛を疑います。