糖尿病とは
体内に糖分が入ると、それがインスリンというホルモンの働きで消化され、エネルギーになります。余分な糖分はインスリンの働きで肝臓に蓄えられていきます。そして一部が尿中に排泄されていきます。
インスリンが出ない(1型糖尿病)と、糖分の利用も貯蔵も出来ないため、著しい高血糖や低血糖を繰り返します。
多くなった糖分の影響で、血中の浸透圧が上昇します。浸透圧は2×Na+血糖値/18+BUN/2.8で計算します。浸透圧を決める大きな要素がNa(つまり塩分)と血糖値と言われます。高血糖は血液の浸透圧を上げ、細胞から血液に水分が引き込まれます。そして脱水になり、意識障害を引き起こします。1型糖尿病が発症する際、血糖値は600にも1000近くにも上昇するため、急激な脱水で意識消失になります。
もう一つの糖尿病は、2型糖尿病と言われる、生活習慣病になります。インスリンが肝臓で働きますが、脂肪肝の場合は油で肝臓が満たされているため、インスリンが作用しにくくなるのではないかと考えられます。また食事摂取量が多いため、常に血液内に糖分が満たされており、それもインスリンの効果を落とすとされます。
糖尿病になると、血中の糖分を利用すること、余剰な糖分を肝臓に貯留することができなくなり、結果として尿中に大量の糖分が流れ込み、甘い尿になります。昔は尿をなめて診断していた名残で、糖尿病という病名がつけられています。
糖尿病のコントロールが悪い方、治療をしていない方に蓄尿をしていただくと、尿中に30~50gほど(スティックシュガーが1本3g)の糖分が出ています。カロリーにして150キロカロリー以上です。糖が流れていくので、痩せていきます。
糖尿病はなぜ治療が必要?
一つは糖尿病そのものの害を防ぐため、もう一つは合併症を防ぐためと言われます。
糖尿病そのものの害
高血糖による意識障害が主になります。1型糖尿病では病気の発症が急なので、特にこの症状を認めます。2型の場合は徐々に症状がでるため、自覚していない方が多いです。また糖分をうまく消化できないため、体内に貯留している脂肪や筋肉を燃やすため、痩せていきます。また体がつる、動かないなどの症状になります。”歩けなくなった” ”目が見えにくくなった” ”体がだるい”といった症状で患者さんが受診なさったことがあります。
合併症
網膜症、神経障害、腎障害、大血管障害になります。糖尿病は血管の病気と称されています。
網膜症
高血糖により血管がドロドロになり、めぐりが悪くなります。酸欠になってしまうため、目を守ろうと新しい血管(新生血管)が生えてきます。しかし、この血管はもろいため、簡単に破れてしまい、出血に至り、失明します。現在失明の原因の1番は糖尿病性網膜症です
糖尿病を有している方は3~6カ月に1回は眼科にいく必要性があります。
神経障害
糖尿病の罹患歴が7年を超えると、神経障害が出現します。足の感覚が鈍くなります。温痛覚が鈍くなるため、火傷や傷ができても気づかない方がいます。気づいたときには病気が進み、切断に至ることがあります。
腎機能障害
血中に糖が大量に入り腎臓に流れてきます。糖は非常に大きな分子なので、腎臓のフィルターに詰まっていきます。結果として腎臓の機能が悪化していきます。最終的に透析に至る方が多いです。透析をしている一番多い原因は糖尿病です。尿中のアルブミンを測定し、必要に応じて薬を導入することで、透析に至るまでの時間を延ばすことができます。
大血管障害
脳梗塞、心筋梗塞です。
治療目標
糖尿病は初期にしっかり治療をすれば合併症を防ぐことができるとされます。一方で、コントロールが良い方はうつ病の罹患者が多いともいわれます。そのため、ご年齢に応じて、また病気の背景を把握した上で、どのような治療を選択していくのか、しっかりと決めていくことが重要です。