子供の冬の感染症① RSウイルス
RSウイルスとは
RSウイルス、正式名称は respiratory syncytial virus 。日本語に訳すと、呼吸器系発疹ウイルス。つまり呼吸器疾患を引き起こすウイルスです。 年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染するとされています。軽傷(かぜ症候群)~重症(入院が必要な急性細気管支炎)まで様々な病態になりますが、初感染時に重症化しやすいと言われています。
生後半年までは、お母さんから抗体が母乳などを通じて移行しており、ウイルス・細菌感染にはかかりにくいとされていますが、RSウイルスは生後半年未満でもかかることがあります。
9月頃から流行し、初春まで続くとされてきました(子供の冬の風邪の代表です)が、近年では夏季より流行が始まるようになってきています。
上図は東京都感染症情報センターの患者報告数の推移ですが、今年は例年より感染の開始が早い傾向にあります。
感染経路
主な感染経路は飛沫感染と接触感染であり、感染力が非常に強い。風邪症状のみの軽症例も多数存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難である場合が多いです。そのため、保育園を中心として集団感染を認めます。
症状
潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされます。
発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日間続いた後、20~30%の初感染児において、下気道に影響が及ぶ場合があるとされます。上気道炎症状のみであれば、通常の感冒と同じ症状です。下気道まで及ぶと、急性細気管支炎という診断になり、呼吸状態が悪化するため、入院に至ることが多いです。RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとの報告もあります。肺炎になると、致死率が比較的高い(平成24年の人口動態統計:年平均31.4人の死亡を認める)とされています。
診断
迅速検査キットがあります。
当院には、冬の風邪としてRSウイルス、インフルエンザウイルスがあるため、同時に測定できるキットを用意しています。ただし、RSウイルス検査は 1歳未満の方しか保険適応がありませんので、病状に応じて検査をさせて頂きます。
治療
治療は基本的にありません。下気道まで及んでしまった場合には呼吸管理が必要になります。