帯状疱疹について

今週、帯状疱疹の患者さん、帯状疱疹後神経痛の患者さんが来院なさいました。帯状疱疹は一生に1回くらい経験する病気です。原因や対策を記載していきます。

<帯状疱疹とは>

幼少期に感染をした水痘ウイルスの再燃によって生じます。 幼少期に感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella-zoster virus)が体の神経節に潜み、ストレスを感じたり、免疫力が落ちたとき(抗がん剤治療をした時など)に、ウイルスが再活性化して生じます。

年齢とともに発症頻度が増え、年間で70歳代では人口1000人当たり7.8人発症します。 全年齢では人口1000人当たり4人発症とされ、幸区の人口が15万人ですので、年に600人程度発症する計算になり、かなり高頻度と言えます。80歳までに3人に1人は経験すると言われますが、もっと多い印象です。

季節では夏に多く、性別は女性が多いとされます。

<症状>

皮疹出現の2~7日前に、痛み、ピリピリ感、かゆみなどが生じます。その後、同部位に赤み・水疱を伴う皮疹が出現します。数日すると水疱が膿み、7~10日で痂疲化し、約3週間で治癒します。

皮疹の出現は、片側性であること、皮膚の神経支配(デルマトーム)に沿って出現することが特徴です。

図1 デルマトーム

<診断>

片側性のデルマトームに沿った皮疹が出現した場合には、帯状疱疹を強く疑います。しかし、痛みや痒みが先行すること、皮疹が軽度であることも多いことから、診断が難しいこともあります。特に頭部や陰部など、デルマトームに沿っているのか、判断が難しい際には診断に難渋します。

診断が難しい場合には、迅速キット(デルマクイックVZV)などを使用して検査をしますが、この検査キットは余り普及していません。診断が難しい場合には、皮膚科を受診いただき、迅速抗原検査を実施することがあります。

<治療>

①抗ウイルス薬

なるべく早期に抗ウイルス薬を投与して、ウイルス量を下げる必要があります。診断が難しい場合、疑わしい場合には、投与します。仮に帯状疱疹であったときに、投与開始が遅くなることで、後遺症が強く残ることがあるので、なるべく早期に投与開始をします。

抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビルなど)の副作用は、腎機能障害です。腎機能に応じて投与する必要がありますが、御高齢者は潜在的に腎機能が低下しており、さらに疼痛で水分摂取困難になり、腎機能が悪化⇒薬の副作用が強く出る、ということを複数回経験しました。

腎機能に影響なく処方できる薬としてアメナリーフがあります。僕はアメナリーフを基本的に処方しています。1日1回、1回2錠を7日間服用します。

②鎮痛薬

鎮痛薬として、ロキソニンなどの痛み止めと、リリカやサインバルタなどの痺れを抑える薬を使用します。

※リリカとは

神経痛(ピリピリ、ビリビリする痛み)に使用する薬です。神経の興奮を抑えることで痛みを消します。神経の興奮が無くなるため、眠くなるのが一番の副作用です。眠くなりながら痛みを忘れていくというイメージです。生活ができるギリギリの量まで増やしていき、痛みを取ります。

※サインバルタとは

抗うつ薬としても認可をうけている薬です。痛みにかかわる神経物質を調節し、鎮痛をはかります。徐々に増量していき、効果が出てきます。リリカと比べて効果発現に時間がかかるため、まずはリリカを使用します。

③神経ブロック

ウイルスが暴れた神経に直接麻酔を打ち、鎮痛を図ります。非常に有効な治療ですが、繰り返し投与が必要で、発症から早い方が効果が強いです。疼痛が強い人は1週間~1か月までにブロックを開始します。ブロック注射はペインクリニックでの実施となります(当院で対応できません)

※帯状疱疹後神経痛の程度は人によって千差万別です。強い方では数年間痛みに苦しみます。

<帯状疱疹ワクチンについて>

2016年から、帯状疱疹の予防のために、50歳以上の成人に対して水痘ワクチン(子供が打つのと同じワクチンです)を接種することが推奨されています。アメリカ・カナダ・オーストラリアでは60歳、70歳でワクチン接種が推奨され公的補助もでます。投与している国々では、帯状疱疹の発症頻度、発症した場合の痛みの頻度が明らかに低いとされています。

ワクチンは自費になります。5000円~7000円くらいで投与している医療機関が多いです。ワクチンの有効期間は10~15年とされ、発症頻度が50歳を超えたあたりから増加していることを考えると、50歳・60歳・70歳で投与することが望ましいです。ご希望の方はクリニックにお電話ください。ワクチンを準備いたします。

※世界的に帯状疱疹ワクチンとして使用されてきた、”シングリックス”が2020年から日本でも接種可能になりました。ネックは、1回2万円と高いこと(2回接種するので4万円)、筋肉注射であることです。今まで日本で使用されてきたのは水痘ウイルスの弱毒化ワクチンで、子供が水痘ワクチンとして接種するものと同じものです。水痘ワクチンと、今回認可を受けたシングリックスは、効果は同等であることから、当院ではシングリックスを採用していません。従来型の帯状疱疹ワクチンは、生ワクチン故に、免疫抑制剤を使用している方へ接種できませんでした。免疫抑制剤を使用している方はシングリックスをお勧めします。シングリックスを打ちたいという希望の方はご連絡いただければ取り寄せますので、お電話ください。